「あのー、どこまで行くんですかー?」
私はそんな真面目な方だとは思ってないけど、今は掃除時間だ。
ちゃんと掃除しようよ・・・。
はぁと小さくため息をはくと、先頭の女子がピタッと足を止めた。
「この辺でいいわ」
連れてこられた所は、昼間水嶋と出会ったところだった。
私の周りにいた女子たちは、みんなストレートパーマの女子の後ろに移動する。
そして私は塀に背中が付くまで追いやられた。
「あ、あの、なんなんですか?」
「なんなのか、あなたが一番良く知ってるんじゃないの?」
「え?」
意味がわからない。
女子に呼び出されるなんてこと、今までの一度もなかったからわからない。
もしかして、私この人たちに知らず知らずなんかしたのかな?
でもそんな心あたりもない。
「あの、まったくわからないんですが」
「・・・ふざけないで!」
「えぇ!?」
な、何が!?
だってホントに呼び出される理由がわからない。
ふざけるなって言われても、こちとら一切ふざけてないんですが・・・。
てかむしろ真剣です。
「あれほど忠告してたのに、相変わらず一緒にいるし!」
「そうよ!
そんなことが許されると思ってるの!」
ギャーギャーと、みんなが一斉に文句を浴びせてくる。
けど内容がイマイチ理解できてない私には何が何やらだ。
「ちょ、ちょっと待って!
全然意味がわかんないんだけど!」
やっとの思いで女子を沈めて、意味がわかるように言ってもらう。
「まだシラを切るなんて・・・。
あなたが水嶋くんを狙ってるのはバレバレなのよ!!」
「・・・・ん?」
さっき何か変な単語が出てきた気がする。
誰が誰を狙ってるって?
銃撃ごっこ?
「あんた、水嶋くんにべったりしちゃってさ!
気持ち悪いのよ!」
「近寄るなって書いてあげたり、水をぶっかけて忠告したにも関わらず、いつまでも隣にいる・・・。
挙句の果てには水嶋くんと瀬戸口くんと一緒に帰ってるし。
どんな手を使ったのかは知らないけど、これ以上あなたの好き勝手にはさせないから!」
・・・えーと。
一回整理しよう。
え?
私が水嶋にべったり?
私が水嶋を狙ってる?
てかあの紙も水も、あんた達だったんだ・・・?
あの後体操服で帰ったからね。
恥ずかしかったし、寒かった。
で、この子達は水嶋の何?
ただ水嶋に群がってるだけの外野でしょ?
それなのに気持ち悪いとか、許さないとか、意味わからない。
私からしたらあんた達の方がよっぽど気持ち悪いんですけど。
水嶋が誰と一緒に帰ろうが、それは水嶋の勝手じゃん。
それを許さないって、あんた達水嶋の親かよ。
頭の中でいろいろと文句や疑問を浮かべるが、口には出さない。
口にしたところでうるさそうだからだ。
まぁ、冷めた目で見るくらいはいいよね。
「・・・何、その目?」
「何って、冷めた目だけど?」
さらっと言ってのける。
だってただ質問に答えただけなのだから。
「っ!
うざいんだよ!」
パーンっといい音が外に響く。
私の左頬がヒリヒリと痛んでいた。
「あんた、自分の立場わかってんの!?
こっちはこんなにいるけど、あんたは一人なんだよ!
誰もあんたの味方なんていないし、誰も助けない!
大人しくしてればこんなことにはならなかったのにね!
ハハハハハハハっ!」
狂ったように高笑いする女子たちをさっきより鋭く睨みつけてやった。
腐ってる。
ここにいる女子はどいつもこいつも腐ってる。
「その目・・・。
やめてよ」
「・・・・」
「やめろって・・・言ってんだろ!!」
パーンっと二度目の音が鳴り響く。
頬は更にヒリヒリと痛みを増した。



