昼休み1人悶々と考えていると、丁度中庭で水嶋と出会った。
「あっ」
「ん?
あぁ、なんだ吉野か」
私だとわかると、水嶋はホッとしたように息を吐いた。
それにしても、なんだとはなんだ。
「吉野で良かったよ。
他の女子だったら騒がれるから疲れるんだ」
水嶋が座っているベンチの隣へ、私も少し間を置いて腰掛ける。
「水嶋ってずっと女の子が好きなんだと思ってた」
「だろうな。
まぁ、そういうキャラ作ってんだし、仕方ねぇよな」
そういえば、前にもそんなことを言っていたような気がする。
作り笑顔を作ってないと生きていけないんだよって・・・。
まぁ、冗談だったみたいだけど。
でも、
「何でキャラなんか作ってんの?」
「え?」
サーと私たちの間を風が優しく包み込むように通っていった。
少しの沈黙があって、水嶋はため息を吐きながら優しく話し出してくれた。
「まぁ、なんて言うの?
俺の家さ、他の人たちよりちょっと裕福なわけよ」
つまり金持ちと言いたいんだな。
「で、兄が2人いるんだけど、その兄2人は何でもできる、いわゆる天才ってやつだったんだ。
でも俺は兄たちと違って容量がよくなかった。
だからまだガキのくせして親に嫌われないように、ずっといい子ちゃんの仮面を被ってたんだよ。
それが今も取れないってわけ」
「ふーん」
てことはやっぱりこの前言ってた作り笑顔のやつは半ば嘘じゃないってことだよね。
そんなキャラ作ったままの生活なんて疲れないのかな?
「ま、貴斗だけは吉野みたいに俺の作り笑顔に気づいたから、あいつだけは特別な存在」
「そうなんだ」
そっか、やっぱり瀬戸口くんと水嶋はお互い特別な存在なのかもしれない。
よかった、やっぱり仲がいいんだ。
「で、何で吉野はこんなとこにいるんだ?」
「え?
あー・・・、散歩?」
「昼休みに散歩って・・・。
よっぽど暇なんだな」
「いや、暇ってほどでも・・・」
ないんだよね。
あぁ、そうだ。
丁度水嶋もここにいるんだし、水嶋は私のことどう思ってるのか聞いてみてもいいかな?
ついでに瀬戸口くんが私の事どう思ってるのかも・・・。
「なぁ、そんな暇ならちょっと俺と付き合ってみない?」
「・・・はい?」
「よし、決まり!
んじゃ行くぞ!」
「え、行くってどこに!?」
有無も言わさず、水嶋は立ち上がって座っていた私の腕を掴んで駆け出した。
「いいもん見せてやるよ」
「いいもん?」
一体何だろうと思いながらも、大人しく引っ張られることにした。