「瀬戸口くん?」


「あのさ、間違ってたらあれなんだけど・・・。
吉野さんのストーカーってあの人?」


指を指された方を向くと、ちょうど黒いパーカーをかぶった男の人らしき人物が気づかれたと思い、逃げようとする最中のところだった。


「え・・・?」


待って。


私にストーカーなんていなかったはず。


きっとあの人は何かの間違いだよ。


うん、きっとそう・・・。


「なんだ、お前本当にストーカーに付け回されてたのか?」


私の小さな不安なんておかまいなしに水嶋が聞いてくる。


「知らない・・・。
そんなの私が聞きたいよ!」


あの人が私のストーカーと決まったわけじゃないのに、恐怖と不安が入り混じってパニックになる。


「どうしよう・・・」


明日もあの人がここにいたらどうしよう。


後なんて付けられたらどうしよう。


怖くてこの道を歩けないかもしれない。


「怖い・・・」


さっきまで私にストーカーなんて存在しないと思っていたのに、いざいるとなるとどうしていいのかわからない。


頭を抱えて思いを巡らせていると、温かいものがふわっと頭の上に置かれた。


「そんな怯えんなって。
俺たちがついてる」


あの作り笑顔でもでもなく、意地悪な不敵の笑でもなく、昨日の別れ際に見せた優しい表情で水嶋は私の頭を撫でていた。


「そうだよ。
吉野さんを守るために僕たちがいるんだからさ。
ちゃんと頼ってね?」


瀬戸口くんも笑顔で私に笑いかける。


きっと二人は私を安心させようとしてるんだ。


そう思うとほんのり胸が暖かくなって、喉がきゅっと熱くなり、今にも泣きそうになってしまう。


なんとか涙は我慢して、私は今二人に


「ありがとう・・・」


と伝えることでいっぱいいっぱいだった。


ありがとう。