「いつから?」


「え?
水嶋に始めて会った時から?」


最初からあの笑顔は作られたものだと気づいてた。


廊下で女子に囲まれている時も、先生と話をしてる時も、男子と笑い合ってる時も。


全部、ニセの笑顔だってわかっていた。


「へー。
吉野さんはよく俺のことを見てるんだね」


「いや、普通に気づくでしょ」


一瞬見ただけでもわかる。


だって私が水嶋を見るのはすれ違った時や、傍を通りかかった一瞬の時だけなんだから。


反対に何で周りにいる女子共は気づかないのか不思議なくらいだ。


「笑いたくなければ無理して笑うこと無いじゃん」


「そうだね・・・。
でもさ、僕みたいな人間は作り笑顔でも作ってないと生きてけないんだよ」


「え・・・?」


顔を上げた水嶋は、眉を下げて小さく笑った。


かと思うと、ぱっといつもの笑顔になり


「なーんてね。
ビックリした?」


なんて言ってくる。


「さっきのは冗談だから、気にしなくていいよ。
でも、君に僕の笑顔がバレてるんならこんなキャラももういらないかな」


そう言って片手で私の頬に触れてくる。


一気に顔との距離が近くなって不覚にもドキッとする。


「このキャラ演じるのも疲れてきてたんだよ。
ま、これで話も早くなりそうだからよかったかも」


「は、話し?」


「そっ。
お前さ、俺とこれから毎日一緒に帰らねぇ?」


「はぁ?」


キャラを作っていたことはさっきの会話でなんとなくわかったけど、キャラがなくなるとここまで違うとは・・・。


「お前がいるといい魔除け替わりになるんだよ」


「ま、魔除け替わり?」


魔除け替わり・・・。


早く言えば水嶋にいつもくっついている女子たちのことを言っているのか。


「あんたの周りにいる女子たちを近づけないようにするためってこと?」


「正解。
お前にとっても悪い話しじゃないと思うぜ」


「私にとっても?」


別に私が水嶋と一緒に帰ってもなんのメリットもないじゃないか。