そして放課後。
「よーしのさーん!」
「げっ」
教室の扉にもたれながら、水嶋が笑顔で私の名前を読んでいた。
そんな水嶋を無視してカバンの中にノートや教科書を詰め込む。
「あっれー?
冷たいなー。
昨日一緒に帰った中じゃーん」
気づいたら、私の目の前にしゃがんで満面の笑みでこちらを見ていた。
「ひっ」
いつの間に目の前に移動したのか気づかなくて、小さく悲鳴をあげてしまう。
もう前っちゃんは部活に行ってるから助けもない。
「もー、無視しないでよー?
ね、今日も一緒に帰ろうよ!」
「は、はぁー?」
まさかのお誘いに一瞬頭の中が真っ白になる。
やっぱりこいつはバカだ。
ていうか、何で私があんたと一緒に帰らないといけないんだ。
二度も一緒に帰るとか、死にたくなるわ。
「あんたさー、私じゃなくて他の人にしてくんない・・・?
何で私があんたなんかと・・・」
そう言いかけて口を閉じる。
教室にいた女子と、水嶋がいつも連れている女子の視線が私に痛いほど向いていることに気がついた。
「う・・・ぐ」
「ん?
どうしたの?」
表情が青くなる私に水嶋も気づいたのか、
「帰ろっか」
と言って腕を引いた。
一瞬体に力を入れて抵抗しようとしたが、水嶋がこの場からいなくなった後女子たちにいろいろ聞かれるんじゃないかと思い、腕を引かれるまま、素直に付いて行った。
ま、水嶋とは校門で別れればいいしね。