そして
「それにしてもちょうどいいところに吉野さんがいて助かったよ」
「私は最悪なんですけど」
今にいたる。
「・・・何?
吉野さん俺のこと好きじゃないの?」
「好きどころか、大嫌いだから」
「だ、大・・・?」
「大嫌い。
何であんたを好きだっていう女子がいるのかが不思議なくらい」
「ふーん、吉野さん俺のこと好きじゃないんだ・・・」
「だから一緒に帰りたくもないんだけど。
てか近づいてこないで」
「はははっ。
いやー、吉野さんみたいな女の子初めてだよ。
面白いね」
「は?」
意味がわからない。
何がおもしろいのやら。
「ま、俺より貴斗の方が好きだってことか。
貴斗のこと、好きなんでしょ?」
「貴斗?」
「瀬戸口貴斗」
「せ、瀬戸口くん!?」
「そっ。その瀬戸口くんのこと、好きなんでしょ?」
「は、はぁ!?」
つい足を止めてしまった。
いきなりそんなことを聞かれて一気に顔がほてるのがわかった。
「動揺するってことは図星だ?
そっかそっか、あいつにもとうとう春が来たか」
「あ、あいつって・・・。
あんたと瀬戸口くんってどういう関係?」
「え?
親友だけど?」
「・・・・」
うん、そうじゃないかなって薄々思ってた。
お互い呼び捨てみたいだし。
「で、いつから好きなの?」
「それ言って何になるの?
あんたには関係ないでしょ」
「冷たいねー、吉野さんは。
協力してあげようと思ってさ」
「協力?」
「うん」
「あんたなんかに協力してもらわなくても自分でなんとかするし。
てか、あんたの手なんかかりたくもない」
「ふーん・・・」
「じゃ、私こっちだから。
もう話しかけてこないでよね」
右に曲がって私は一回も笑うことなく、水嶋と別れた。
私の姿を見送った後、水嶋が一人で小さく笑いながら
「吉野七音か・・・。
面白い奴がいるもんだな」
なんて言っているのを私は知るよしもなかった。



