「か、母さん!?」
「お母さん?」
「今帰って来たの?
って、あら…そっちの子は?」
「え、えっと…!」
ヤバイ、こんなところ実の母親に見られるなんて!
恥ずか死!
慌てる私に比べて、瀬戸口くんは冷静に母さんに笑って小さく頭を下げていた。
「初めまして、瀬戸口貴斗って言います」
「あらあら、ご丁寧にどうも~。
七音の彼氏さん?」
「母さん!?」
何言ってんの!?
すでに彼氏だったら、はいそうですって簡単に言えるけど、違うからね!?
「と、友達だよ!」
…友達…で、いいんだよね?
あれ?
私と瀬戸口くんってもう友達?
私だけがそう思ってるとかじゃないよね?
「友達?
そう、゛まだ゛友達なのね」
何、まだって。
まだのところ強調してたし。
「瀬戸口くんだったわよね。
七音のことこれからもよろしくね?」
「もー、母さんそういうのはいいってば!
ごめんね」
「いや、でもそっか俺達もう友達だったんだ。
俺だけ友達って思ってたんじゃないかと思ってた。
よかった」
瀬戸口くんも私と同じ事を考えてたんだ…。
何だか可笑しくて、笑ってしまった。
「家まで送ってくれてありがとう。
気をつけて帰ってね」
「うん、じゃあまた明日!」
手を振って去って行く瀬戸口くんに、私も手を振り返した。
「へー、七音もちゃんと恋愛してるんだ?」
「父さんには言わないでよ?
後兄さんにも」
「はいはい」
嬉しそうに笑う母さんとは対照的に、私はムスッとしながら家の中へ入った。