True Love

それからは前に一度玄関でミルクと戯れていた時と変わらずに、まったりとミルクとのやり取りをしている姿を見ていた。

ココアを飲み干す頃、ミルクは柴崎くんのもとから離れてドアの方へ歩いていく。

「ミルク、どうしたの?」

「散歩に行きたいのか?」

ミルクはその柴崎くんの問いかけに答えるかのように「にゃあ」と鳴く。それにふたりして笑ってしまう。

「ごめんね。まったくミルクは気分屋さんだなあ」

「猫らしくていいな」

ミルクが散歩に行ってしまえば今度こそ解散だな、と残念に思いながら「柴崎くんももう帰る?」と問いかける。

しかし柴崎くんからは思ってもみなかった返答が来た。

「…ちょっと話したいことあるから、もう少しいてもいいか?」

「うん、私の方はまったく構わないよ。じゃ、じゃあミルクを外に出して、ココアのおかわり持ってくるね」

私はそう言って柴崎くんを部屋に残してマグカップを乗せたトレーを持ち、ミルクと共に1階へ降りる。

玄関を開けてあげるとミルクはすっと出て行ってしまう。

話ってなんだろう、と変に緊張しながらココアを入れて部屋に戻る。

「ミルク、散歩に行った?」

「うん、玄関開けたらさっさと出て行っちゃったよ。夕方には戻って来るかなあ」

私がそう言うと、私たちの間に沈黙が流れてしまった。どうしていいかわからず、話って何?と聞いていいのかもわからないのでひとまずココアを飲む。

柴崎くんはすぐにココアに手をつける様子はなく、伏し目がちにして私の方を見ない。

沈黙に耐え切れなくなってしまった私はとうとう「話って何?」と自分から切り出してしまった。

「…おう」

柴崎くんはそう言ってふうと息を吐き、ようやく話し始めた。

「今日、桐山には姉貴の誕生日プレゼントを買うのに付き合ってもらったけど…実はもうひとつ理由があるんだ」