True Love

私の掃除の担当区域は1階から2階の階段だ。ここを杏ちゃんとペアを組んで掃除している。

「確か終業式の日は私がほうきだったから、今日は花音ちゃんがほうきだね」

「うん。じゃあ、ほうき取ってくる」

こうして交互にほうきと雑巾を担当していたが、明日からは新しい掃除区域に配属される。杏ちゃんとふたりで楽しく掃除をしていたので名残惜しさがある。

「終業式の時もそうだったけど、階段だと大掃除の時間持て余すよね」

「確かに…」

終業式の日は早く終わってしまったため教室の手伝いに行ってみたのだが、人数が多くなってしまい結局何もすることがなかった。だから杏ちゃんはゆっくり掃除しようと言う。私も異論はないのでゆっくりと隅々までほうきで掃く。

「夏休みの間、柴崎と何かあった?」

「…花火大会以来、今日初めて会いました」

「そっか、あっちは部活もあるからね」

「杏ちゃんは?部活は違うけど、須田くんと会うことはあった?」

私がそう尋ねると杏ちゃんは「んー」と苦笑いをした。

「会うことには会うんだけど、あんまりゆっくり話はできなかったな。それに…」

「それに?」

「……小学校の時もそうだったけど、あいつってばどうしてだかモテるんだよね。この前も告白されてるところを目撃しちゃった…」

一瞬ドキッとしてしまう。

「えと、返事するところは聞いたの?」

「ああ、うん。『今はそういうのわからないから』って。これじゃ私が告白したところでダメだなって思ったよ。元々告白する予定はなかったけどね」

「そっか…」

小学校高学年くらいからカップルができ始めるようになって、この中学でもカップルの誕生率は高い。だけど、中にはそういうことはまだ考えてない人もいるんだなあ。

柴崎くんはどうだろうと考えてから藤城さんのことを思い出した。付き合うということに興味がないというわけではないのか?でも、藤城さんの押しが強かったから?

周りにカップルが多いからというわけではないけど、私もできることなら好きな人の、柴崎くんの彼女になりたい。それは杏ちゃんも同じだろうけど、簡単には行かないんだよな…。

「花音ちゃん、手が止まってますよ」

「ああ!ごめん…!」

慌ててほうきを動かす。