True Love




その後の夏休みは時々友達と遊びに出かけたり課題を進めたりとして過ごして、今日は新学期を迎える。

夏休みに柴崎くんに会えたのは花火大会の日の一度だけで、ようやく今日会えるのだと思うと新学期はまったく憂鬱になんてならなかった。むしろ、うきうきとした気分で学校へ向かう。

「おはよう!」

教室に入ってすでに教室にいた子とあいさつを交わしながら自分の席の方へ行く。

柴崎くんはまだ来ていなかったけれど、隣の席の杏ちゃんはもう来ていて席について他の子と話してた。

「あ、花音ちゃんおはよう」

私が自分の席にかばんを置くと、それに気がついた杏ちゃんが私の方を向く。私も笑顔であいさつを返してから杏ちゃんの席に近づいてふたりの会話に混じる。

会話の内容は夏休みのこと。何をした、どこへ行ったなどのそれぞれの思い出を共有する。杏ちゃんと話していた子は夏休み以前よりも肌が焼けていて、それだけで夏休みを満喫したのだということを物語っていた。部活漬けだった杏ちゃんも少し以前よりも焼けている。

そうこうしている間にチャイムが鳴り、教室に先生が入ってくる。だけど、それでもまだ柴崎くんは来ていなかった。

もしかして休みなのだろうか、と心配しながら先生の話を聞いていると教室のドアが勢いよく開く音がした。

みんなが一斉にドアの方へと顔を向けると、そこには息を切らした柴崎くんがいた。

「怜、遅刻かよー!」

「うるせー」

茶化すクラスメイトに柴崎くんがそう返していると、先生が笑いながら「早く席に着きなさい」と言う。

「すみません」

席に向かう柴崎くんが近づいてくるので咄嗟に顔を前に戻して俯く。

久しぶりの柴崎くんだ…。

彼が椅子を引いて席に着く気配を後ろに感じながらドキドキする。


「じゃあ、9時半まで大掃除だから1学期の時の自分の掃除区域にそれぞれ行くように。掃除の後は始業式なので各自で体育館に集合すること。以上」

みんなが一斉に動き出す。私も席を立ち、椅子を机に上げて動かす準備を整える。振り向くと柴崎くんと目が合った。

「お、おはよう」

「おはよう」

「遅刻するなんて珍しいね、どうしたの?」

私がそう聞くと柴崎くんは苦笑いをする。

「宿題、終わらなくて…。徹夜でやって、さっきようやく終わったんだ」

遅刻の理由を聞いて思わず笑ってしまう。

「お疲れさまだね」

「徹夜はしんどい…」

そんなことを話しながら自分の席を後ろの方へ動かして、お互いの掃除区域へと向かった。