True Love



好きな人からの言葉って何度も頭の中でリピートしてしまう。

花火大会から数日が経った。部活に入っていない私の夏休みはとても退屈なものだ。

その退屈な時間を過ごしている時、柴崎くんにこの前の帰り際に言われた言葉が頭の中で繰り返されている。

その度に心が浮き立つような感覚になる。そしてひどい時は口元が緩んでしまう。

「花音、なにニヤついてるのよ」

なんてお母さんにツッコまれてしまう始末だ。


こんな風に時間をダラダラ過ごしていてはダメだと思い、あまり手を付けていなかった課題に取り組むことにする。

この前のことをあまり考えないようにしようと課題に没頭していると案外いい感じに進めることができた。

「毎日これくらいできたら余裕で終わりそうだなあ…」

午後3時頃、朝から課題ばかりをしていたので気分転換に散歩に出かけることにした。

外は家の中にいるよりもいっそうにセミの鳴き声が聞こえて夏を意識させる。

どこに散歩へ出かけようかと迷ったが、なんとなく花火大会があった土手の方まで行ってみようと足を向けた。

花火大会の日は杏ちゃんとのおしゃべりに夢中になっていたせいか気がつかなかったが、土手の下の方には色とりどりの花が咲いていた。

きれいだなあ、と思いながら眺めていると土手の坂に座って花を見ている人が目にかかる。後ろ姿だけれどなんとなく見覚えのあるような気がして土手を少し降りて近づいてみる。

「…あ、先輩」