True Love

まだ帰りたくないなあ、なんて考えながら4人で焼きそばのお店を探していると、向かい側から知った顔の人がやって来た。

その人は私が気づくのと同時に私たちの方にも気づいた。

「こ、こんばんは!」

「こんばんは」

それは友達連れの原田先輩だった。突然の登場に思わず声が詰まる私に先輩は爽やかな笑顔で返事をしてくれた。

「誰?」

「図書委員の子だよ」

「ふぅん…」

一言だけ私のことを連れの人に話してから、「じゃあね」と手を振って先輩は過ぎ去っていく。

「もしかして、今のが原田先輩?」

「うん」

杏ちゃんには先輩のことを何度か話していたことがあったので気づいたようだ。

「へえ、かっこいいね~」

私はそれに笑って返すことにした。

視線を進行方向に戻すと私の前を歩いていた柴崎くんが原田先輩の後姿をじっと見ていることに気が付いた。

すると次に柴崎くんの目が私の方を向いたので、彼の方を見ていた私と目がバッチリ合ってしまう。

目が合ってしまったことを気まずく思い、瞬時に目を逸らす。それはどうやら柴崎くんの方も同じ動きを見せたようだ。

柴崎くんのことを見ていたことに気づかれてしまっただろうか、不審がられてないだろうかと不安に思う。同時に、ふいに目が合ったことに心拍数が上がる。

そしてお目当ての焼きそばの屋台に着いて柴崎くんが購入すると、私たちは帰るために階段を上がって土手を歩き始めた。

「あー、明日もまた朝から部活だなぁ」

サッカー部に所属する須田くんのその言葉に私以外の人が反応する。

「私も同じく…」

「俺は昼からだけど、明日もハードなんだろうな…」

このメンバーの中で帰宅部なのは私だけだ。私だけが明日も時間を持て余している状態。

みんなの部活トークを聞いていると、私も何かしらの部活に入ってればよかったかなと思う。