「大森様ぁ!どうか、この僕に国語の教科書をお貸しください!」
席替えをした2日後のこと。また見慣れた光景だ。須田くんがまた杏ちゃんに教科書を借りに来ていた。
「京平、あんたは結局この1学期の間成長を見せなかったわね」
ため息とともにそう言う杏ちゃん。私はふたりのこのやり取りを微笑ましく見てしまう。
「はい。2学期はしっかりね!」
「ありがとうございます!!」
須田くんは忘れ物をしたときは毎回のように杏ちゃんを頼る。ふたりは仲がいいんだろうなあ。もしかして…な可能性もあるね。
「ん?席替えした?怜がそこにいる!」
「あ、京平」
机に突っ伏していた柴崎くんが顔を上げる。
「久しぶり、な気がするわ」
「全然よく会ってるぞ。俺は悲しいぞ、怜よ…」
柴崎くんと須田くんは仲がいいのかな。小学校が同じだろうし、不思議なことでもないか。
「そうだ、大森。来週の花火大会の件についても用があったんだった」
思い出したように柴崎くんの方から杏ちゃんの方へ視線を戻す。
「いつもの場所に6時集合でいい?」
「…律儀に毎年一緒に行ってくれなくてもいいよ。他に一緒に行きたい人とかいるんじゃないの?」
杏ちゃんと須田くんは毎年一緒に花火大会に行っているようだ。
だけど自信なさげにそんなことを口にしている。
「別にいないよ。大森と行きたい」
「えっ!?」
須田くんのそんな言葉に焦りを見せる。


