True Love

去っていく柴崎くんの後姿を見送ってから私も理科室へと向かうことにする。

歩きながら先ほどの自分の行動を思い返す。一体何が私を突き動かしたというのだろうか。

藤城さんのような感じの人は苦手だし、私は誰かに向かってあんなにも感情的になるような人間ではない。

もし柴崎くんが現れてくれなかったとしたら、突き飛ばされたくらいじゃ済まなかった可能性だってあったかもしれない。

藤城さんという人を私は何も知らないのだ。

だけど柴崎くんのことを『優しくない』という彼女の誤った認識を私は許すことができなくて、気が付いたら歯向かっていた。



「見っけ」

理科室に着いて自分が授業の時に座っていた机の中に課題プリントが1枚だけ取り残されていた。

提出日は明日だから帰る前に気が付けてよかった。



もしかすると、私は柴崎くんのことが好きなのかもしれない。

家路を辿りながらそう思った。

恋なんて知らなかった私には断定にまで至ることはできないけれど、自分でも理解不能な行動の理由には合うような気がする。

でも、柴崎くんとの交流なんてほとんどないのに変なの。

誰かを好きになる原理がわからない。