True Love

「なんか、あんたうざいんですけど」

藤城さんは眉をひそめてそう言った。周りの子も私に対して険悪な表情を見せる。

「そうやって正義感振りまくような奴、超むかつくんだよね。自分はいい子ですってアピールでもしてるつもり?」

私の方に詰め寄って来る藤城さん。

「違う!なにもわかってない藤城さんに、柴崎くんのこと悪く言ってほしくないだけだよ!」

「ああ、うざいうざい。いい子ぶりっこはやめて」

藤城さんの方も怒りを露わにして私を突き飛ばす。私はそれに耐えきれず廊下の方に倒れる。

「いったあ…」

私が倒れた時の痛みに顔をしかめた時、それまで無人だった廊下に私たち以外の声がした。

「おい、お前らやめろよ」

一斉に声の方へと顔を向けるとそこには部活のユニフォームを身にまとった柴崎くんがいた。

どうして彼がここにいるのかと思っていると、藤城さんが「はっ」と笑う。

「よかったね、王子様の登場みたい。バカらしくなってきたわ、行こう」

彼女は倒れ込んだままの状態でいる私を一瞬睨みつけてから鞄を教室に取りに行き、仲間を引き連れてさっさとその場を去っていった。

そして柴崎くんが私の方へと歩み寄って来るのを見て私は慌てて立ち上がる。

「何やってんだよ」

眉をひそめながらそう言われ、自分でも驚くような行動を説明することができずに「柴崎くん、部活は?」と質問で返してしまう。

「ああ、保健室に氷を取ってくるように頼まれて。今日、マネージャーが休みでいないから代わりに俺が。そしたら上の階からでかい声が聞こえて何事かと思って来たんだよ。
それより藤城に盾突くなんてやめとけよ、今みたいにどんな反撃に遭うかわからないぞ。痛いとこはないか?」

「そうなんだ…。痛いところはないよ、全然大丈夫!ありがとう、来てくれてよかった」

右手に氷が入った袋を持っていた柴崎くんは早く戻らないと怒られるから、と体育館へ戻っていった。