「怜ってば、つまんないんだもん」
みんなそう言う。付き合ったけど、つまらなかったと。
よくあるそんな文句に対して普段はそんなにも気に留めない。だけど今回はその藤城さんの言葉に強い怒りを感じた。
「あいつさ、背は小さいけどちょっと顔いいから付き合ってみたけど、超つまんない」
「あはは!強引に付き合うようにしたのに、残念だね」
「まず携帯持ってないのよ、ありえない。話しかけても冷たいし、盛り上がらない。しかも全然優しくないのよ。最悪!」
柴崎くんが優しくないなんて勘違いだ。
藤城さんは気づけなかったんだ、柴崎くんの優しさを。
「せっかく私が付き合ってあげたのに、時間の無駄だったわ~」
教室の中で下品にゲラゲラと笑いながら柴崎くんのことを悪く言う彼女らに私の怒りはますます増大していった。
気が付くと体が先に動いて、3組の教室のドアを開けていた。
突然開いたドアの音に驚いた彼女らは一斉に私の方を見る。
「誰、あの子」
「ああ、東京から来たっていう子だよ、1組の」
私のことを知らなかった藤城さんの問いかけに、周りの子がそう返答する。
だけど私はそんなやり取りは気にせずに怒りを露わにした。


