True Love

柴崎くんたちの噂は瞬く間に広がっていった。

噂の真相を確かめようと柴崎くんに問いただす人に対して、彼は「うん、別れた」とはっきり言っているのを偶然耳にした。

なぜかそれを聞いて少し気持ちが上がるような気もしたが、逆に下がるような気もするという不思議な気持ちになった。

恋愛はよくわからないけど、付き合ったと思いきやあっさりと別れてしまうという柴崎くんになんとなくがっかりした。

中学生の恋なんて、そんなものなんだろうか。

柴崎くんって、そんな人だったんだって。

最近の私の気分はややこしい。本人すらよくわからない気分だ。


そんな気分だったからだろうか。破局の話を聞いたその日の放課後、帰ろうとしたときに授業中に配られた課題プリントがないことに気が付いた。

「もう、変なこと考えてるから…」

なんて1人で呟きながら、そのプリントが配られた理科室へ向かう。

今日は部活のある日だからほとんどの人がすでに教室棟から出払っていた。

ちょうど３組の前の廊下を歩いている時、その教室から声が聞こえた。


「羽衣ってば、なんで柴崎と別れたの？」


思わず足を止めてしまう。


「え～、だってさあ」


盗み聞きなんてダメだ、と思いつつその言葉の先がつい気になってしまった。