True Love

その日の放課後、私は初めてその藤城さんという人を見た。いや、初めて見たというよりも、初めてあの子が藤城さんなんだという認識をした。


「怜~、一緒に帰ろうよ!今日は部活休みでしょう?」

うちの教室に入って、柴崎くんの下の名前を親しげに呼んだ子の方を見る。

「やっぱりふたりは付き合ってんだ~」

最初に私たちのもとへカップル誕生の知らせを持ってきた子が私の近くでふたりのことを楽しそうに見ていた。

教室にまだ残っていた人たちもざわざわとする。

藤城さんという人は廊下で何度か目にしたことがある子だった。印象としては数人の子たちといつも行動を共にしていてその真ん中に立っている、という感じだ。

少し釣り目で大きな目が特徴的だと思った。

一緒に帰ろうという誘いに対して、柴崎くんはいつもの女子に対するような感じで嫌そうな顔をしながら「え…」と言っていた。

いや、嫌そうなわけがないか。付き合ってるのに…。

恥ずかしがっているのだろうと考えた。だって周りのみんなが柴崎くんたちに注目しているのだから。