…不毛だ。不毛すぎる。


何度か質問をしたが、柴崎くんはまったく会話を続けてくれようとはしない。


確かに私の質問は特に意味はないし、私は部活に所属していないし、あまり広げられるような内容ではないかもしれない。


でも、少しくらい何か会話を広げてくれてもいいんじゃない?


私はこれ以上は無理だ、と思いまた黙り込んだ。


次は時計の針ばかりを眺めた。そして早く進め、と願う。



「教室に戻っていいわよ」


カウンター当番終了時刻になり、野神先生が奥の部屋から出てきてそう言った。


私はさっさと教室に戻ろうと立ち上がる。


「お疲れさま」


「おう」


お互い一言だけの会話をして、向かう教室は同じなのに私たちは距離を置いて歩いた。


教室に戻ると、ちょうどドアの近くにいた杏ちゃんが「おかえり」と声を掛けてくれた。


「ただいま…」


「元気ないね、大丈夫?」


「…柴崎くんとカウンター当番、気まずすぎるよ……」


小声でそう嘆く。柴崎くんのことを私よりも知っている杏ちゃんは苦笑いした。


「まあまあ、あいつは女子苦手だから…」


「…うん」