「その勢いのまま
出てきちゃったけど…
おれ、何やってんのかなあ…
って思っちゃってたわけ。

後先考えず出てきて、
莉乃と全然会えなくてさ…
自分から会えるチャンス減らして
どうすんだ、ってさ」

「…会いたいなら
会いに行けばいいんだよ」

「え?」

「会いたいんでしょ?
なら会いに行きなよ!
遠いって言ったって
高校通うにしては遠いって
だけなんでしょ?
国際カップルじゃあるまいし!
こんな家から数秒の公園で
ウジウジすんなっ!!」





多分涙目になっていた。

それが必死で叫んだせいなのか、
彼の世界に私が全くいないと
思い知らされたせいなのかは
わからない。


わかりたくなかった。








「そっか、そりゃそうだ…」



立ち上がった高瀬くんの目は
キラキラしている。



「よっし!
今週末行くわ!!

…佐山さん、さんきゅな。
おれ多分心のどっかでは
会いに行きたいと思ってたんだよ。
でも決心出来ずにいた。
おかげで気持ち決まったわ!
じゃあまた明日っ!」








もし他の子に
同じ相談されてたら

本当に後悔してるなら
もっと彼女と会いやすい所に
引っ越し直せ!
って言ったと思う。


…これは小さな抵抗。



彼女と戦う勇気もない私の、
それでも純粋に応援は出来ない私の、
小さな小さな抵抗。







あなたがそうして
笑ってくれてる時だけは、

彼女の存在を忘れられるから。



今だけは、今の笑顔とお礼だけは、
私だけに向けられたものだから。



それで幸せ。
今はそれでいい。