なんだか、
私の知らない"タカセくん"が
そこにいるような気がした。



そうだ、ほんの1週間ちょっと
一緒にいただけの私が、
一体彼の何を知っていたというのか。





それでも他のクラスメイトよりは
仲がいいと思っていた私の
小さな自信を砕くのには、
その1組のカップルの様子は
十分なものだった。



何より、彼女を見る高瀬君の目が、
今までのどんな時と比べても
また一段と優しいのだ。





私はそれ以上見てられなくて、
休憩室に逃げ込んだ。





「ン、佐山じゃん、どした?」

「あ、佐伯…」



ちょっと気まずくて
目を逸らす。

休憩室にいた佐伯も、
外の声は聞こえていたはずだ。



「…てかさ、俺、
ここで絶賛サボリ中だから。
邪魔すんなよなー」

「あ、ごめん…
って!
なにサボってんの!
表結構忙しいんだけど!
てかあんたそういえば朝から
全然姿見えないと思ってたら
ずっとサボってたわけ!?」

「ははっ、めんごめんごー」

「おっ前〜!!」

「へーへー、今からちゃんと
働きますよ〜っと」





ギャンギャン騒ぐ私の横を
佐伯がわざとダルそうに通り過ぎる。

と、その時肩を
ポンとたたかれた。



「ガンバレよ」

「なっ…」