「美和」 土砂降りの雨の音に掻き消される事なく 聞き慣れたその声は 山瀬先生じゃなくて、 「…康介」 傘を差していても尚、濡れたスーツがそこにいた時間が短いものでない事を知らせる。 「話、出来る?」 掠れた鼻声。 「今更、何?」 あたしは冷たく言い放った。 だけど康介は怯む事なく 「今更、ごめん」 力なく微笑む。 眉を寄せる苦笑に胸が疼いた。