駄目男、最低。

居酒屋を出た後、タクシーの中であたしはひどい睡魔に襲われていた。


アルコールは睡眠不足の身体には重い。


それから


横に座る山瀬先生がゆっくりあたしの手を掴んでいた。拒まないのは、その温もりが優しかったから。

「俺んち、来いよ」


山瀬先生は低い声で呟いた。ふざけた口調じゃない真摯な瞳が暗闇のネオンに反射する。


多分、あたしは弱ってるから。


返事の代わりに山瀬先生のがっしりした肩に頭を乗せた。