駄目男、最低。

僅かに眉を上げて探る様な視線を向けたお兄さんも、多分全く変わらない私の表情に苦笑してから「…気にならない？」と聞いた。


そんな事で動揺してたら身が持たないし、気になると思うんだったら言わないでいて欲しい。
…むしろ数々の裏切りを思い出してチクリと胸が痛んだ。


「過去の話ですし」


その頃には私は出会ってないんだから。


「まあそうなんだけどね」


下村さんは面白くなさそうに言葉を返した。お兄さんは「そうそう昔の話だよ」と言ってから「美和ちゃん連れてくるって行ったから安心した。」と笑う。


「安心？」


「うん。あいつ馬鹿みたいに一途だから。」


一途？その単語は康介には似合わない。実際そんな康介は知らない。


…だとすれば、今の会話の流れを汲むしかない。



「留美さんとは激しく愛し合ったんですね」



言い方が変だけどそれしか思いつかなかった。