駄目男、最低。

喫茶店を出た後、康介の横顔を眺める。


いつもと変わらないのにいつもと違って見えるのは、あたしの知らないこの小さな街に馴染んでいる彼を感じているからかもしれない。


「兄貴どこいったんだろ」


その視線を遮る様に康介は呟く。


「携帯は?」

「家にあったから多分持ってない」

「思い当たる?」

「んー…」


よく晴れた空が眩しい。静かな小道を歩き続けるのは案外楽しい。


緩い沈黙が続いて


それを破ったのは「あ」という康介の短い声。