「さくちゃーん」


キタ━━━━━━━━!!


「はいはい!今行きます!」

あの人の声が聞こえ
お兄ちゃんのことなんか
ほっぽり出して
玄関へ急ぐ。

「おはよ、今日も、早起きだね」
「えへへ....麟兄ちゃんも早いですね。」

お兄ちゃんの学生時代の友達で
ご近所さんである、
志磨 麟(しま りん)さんは
もう一人のお兄ちゃんみたいな存在。

毎朝この時間に来てくれる。

何をしに....というと。


「今日もおいしそー、食べていい?」
「どうぞー!」

麟兄ちゃんは2年ほど前から
ひとり暮らしをしてる。
朝ごはんがいつも偏ってるから、
体調管理ができない....
ということでこうして
一緒に朝ごはんを食べている。

『いただきまーす』

普通の家なら兄ちゃんの友達ってだけでこんなことしないみたいだけど、
10年以上の付き合いがあるんだ。
それに....。

「うん、さくちゃんのご飯は相変わらず美味しいね。」
「むっ!お前咲菜のこと狙ってるな?」
「おじいさん、今日は何して過ごしますかぇ....?」
「わしは....ゴルフに行く。」

こうやって
一人でも一緒に居てくれる人がいるだけで、楽しい。

ああ、それと。


「さくちゃん、今年も家庭教師やってやろうか?」
「えっ?いいの!?」
「いいも何も、それぐらいさせろよ(笑)」

麟兄ちゃんは家庭教師をしてる。
まあ非公式だけど。

教え方上手だから
塾の講師とかなれそう....。

「ホントの家庭教師にはならないの?」
「そしたらお金取ることになるよ?」
「いや....別に私じゃなくても....」
「ん........」

目をつぶってしまった麟兄ちゃん。
な、何か変なこと言ったかな私。

「さくちゃんの家庭教師がしたいの。」
「あ、あそうなんだ....」

私限定かぁ....
もったいないなぁ....
麟兄ちゃんてば、
普通にモテそうなのに。

「そろそろ時間だ。またね。」

気づけば時計は7時をさしていた。
私もそろそろ準備。

「また明日!家庭教師の件ありがと!」
「ふふ、じゃ俺は仕事行ってくるな。
ほれ、恭介もいくぞー....」


なんかいいな....
この感じ....


あ!
準備しないと!

「おばあちゃん片付けよろしくね!」

おばあちゃんに食器の片付けを任せ
私は準備に向けた。