「ただいま〜。」

住んでる家は一軒家。
築40年になる。
2階建てのこの家に越してきたのは
私が小学校に上がった時。

「ああ咲菜ちゃんかぇ、おかえり。」
「今日は婆ちゃん、刺繍してたんだ~」
「花枝、今日の晩飯も簡単でええぞ」
「爺ちゃんそれいつも言ってる(笑)」

おじいちゃんとおばあちゃん、
そして、

「あ、お兄ちゃん、学校に忘れ物。」
「おーー!咲菜サンキュー。」

お兄ちゃん。

お父さんとお母さんはいません。
気づいたらこのメンバーで
お母さんの実家であるこの家に住んでました。


カーンカーン
「お母さん、お父さんただいま。」

遺影に目を向け今日の活動報告。

「今日は高校の入学式だったよ。
いろんな人に出会えて、お兄ちゃんのちょっとしたサプライズもあったりした(笑)」


昔、お兄ちゃんから聞いたのは、
とにかくとても優しい両親であったこと、そして交通事故に巻き込まれて亡くなったってこと。

「咲菜、今日は何作るのー?」
「うーんとねー、」

私が中学に上がってからは、
晩御飯は私担当になっている。
勿論おばあちゃんと一緒に作る。

今日は筑前煮でも作ろっかな。
あ、きんぴらごぼうも作ろー。

夜の献立は昼に速攻で決め、
夕方までに買い出しを済ませる。

「今から買い物行ってくるね〜」
「おお、いってらー」
着替えるの億劫だから制服のまま。
他にもまぁ理由あるんだけどね...



「へい!!らっしゃい!!」
「おじさん、細切れ肉と柔らかい肉くださいな。」
量がちょうどいいやつに指をさし、
お金の準備。
「制服割で1000円! へいお待ち~!」

そう、この商店街、
制服割というものがある。
学生割引と似たようなものである。

肉を購入し、八百屋へ向かう...

「えーと...里芋、ニンジン、シイタケ、タケノコ、こんにゃく....」

買い物メモをもとにカゴへぽんぽん入れていく。慣れたものだわ私も。

....こんなもんかな!

レジへ向かおうとした時。

ドンッ!

「ったあ...…!」

誰かにぶつかってしまった。

「わわ、君大丈夫!?」
「あ、はぁ、大丈ぶー・・」

ってこの人...!

『あー!!!』