教科書の配布場所まで連れて行くことになった。

まずどうしよう。



「んー。とりあえず、並ばせよっかw」

「あ、あ、うん、そうだね。」

ぼーっとしてたら、
笠倉くんに声をかけられて少々きょどってしまった。

「出席番号順に、男女混合2列で並んでくださーい!」

廊下に生徒たちを出させ、
みんなが並ぶまでに配布場所の確認をする。

「えーっと、体育館の裏側だから・・・。」

B,C,Dとかの最初のクラスの後だったら
ついていけばそれでよかったんだけど、
最初のクラスになったからなー・・。
こういう時に厄介だ。


「笠倉くん、みんな並び終わった?」
「うん、オッケーだよん」

位置確認を済ませ、出発の合図。
あー、中学時代が懐かしい。といっても
1か月前まで中学生だったんだけどね(笑)



体育館は北校舎側にあって、
私らがいる1,2年は南校舎なんだよね。
3年は北校舎。
渡り廊下を渡って南校舎へ行って
階段を降りて1階の3年生の昇降口から
左へ出たところから繋がる小さな通路を渡って・・。


体育館の裏側だから、ぐるっと回って反対側へ行く。

「お、あれかな?」

笠倉くんが指したところに小さな小屋。
そして見覚えがある顔が。

「あ!戸島先輩!」
「おー、咲菜ちゃんじゃん。様子を見るからにー、学級委員になったのかな?」
「え、ええ。まあ...あ、先ほどの件、
 ありがとうございました。」
「まあまあいいさ。さっきのはほんとにあいつが悪かったんだしw」
「ハハ..戸島先輩はなんでここへ?」
「ん? ああ。そりゃ俺ら入学生を面倒見ることになってる”Welcome委員会”のメンバーだからね」

なんでも、毎年入学式前になると
3年生の方でちょっとした委員会を作り
一年生の面倒をいろいろ見ることになってるそうです。
その委員会名が何とも言えないのですが、
どうやら戸島先輩はその委員会の委員長みたい。

「じゃあこれからもいろいろとご迷惑をお掛けすることになるのですね....」
「はははw そんなしょげないでよ~。俺たち好きでやってんだしさ。面倒見るのって結構楽しいんだぜ?」

小6の頃、小1の面倒を見てたときあったなー。
もしかしてそんな感じなのかも。
だってほら、下級生ってやっぱり可愛いし。

「んで、委員会名義でクラス分けの表を作ったり、
新入生クラスの飾り付けとか、こういった教科書・道具の配布のお手伝い、その他学校生活で不安なことや分からないことを気軽に相談できる結構便利な委員会なんだよなw」


すごいな~。
私もお世話になるかもしれないし、今度委員会に足を運んでみよう。


『キャーーーーーー////』
『坂野会長こっち向いてーーー///』

・・・坂野だと?

『きゃきゃ、こっち来るーーっ//』


嫌な予感がする。


「やあ。またあったね(ニッコリ」

ゾーーーッ
血の気が引いた。
あの生徒会長が何故してここに。

「なんで僕がここにいるか、っていう顔してるね~。
 理由は簡単さ。僕は咲菜ちゃんに・・「おい坂野」」

ファ!?

「お前さ・・
 咲菜ちゃんのホッペに..Kiss・・したんだって?」


『キャーーーーーッッ!!!!////』

戸島先輩が後ろから坂野会長の肩に手を置き、
顔を向き合わせる。
び、美形王子二人組の間に不穏な稲光が。

てかなんで私の名前が入ってるの!?
てか、てかなんで戸島先輩が、わt、
私のき、ききkkき、キスのこと知ってるの...!?!?

「っち..だからなんだい? 戸島には関係ないだろ。」
「関係大有りですぅ、だってあの子は「教科書を受け取ってない生徒は居ませんね」」

坂野会長に引き続き、
戸島先輩の発言が途中で誰かに邪魔された。


「では、学級委員各自クラスへ戻るように促して帰ってください」


何この人...。
多分先輩だろうけど、
すごい冷たい目をしてる.....。

「そこの人、聞こえてるんですか?」

「あ!あ あ、はいすみません。スグいいます」

「はあ、全く。坂野も戸島も、さっさとその喧嘩をやめろ」

「ちぇー、三輪田はほんと冷たい奴だなー(笑) てか委員会の一人なんだから少しは態度を穏やかに...」

え!?この人Welcome委員会の一人だったの!?

「そうだよー?三輪田くん。そんな眉間にしわ寄せてたら怖い顔になっちゃうよー?」

坂野会長と戸島先輩、
さっきの喧嘩はどこへ。


「・・・元からこういう顔なんだ。ほっといてくれ。
 はあ、俺はもうクラスへ戻る。1年も早くクラスに戻るんだぞ」

『は。はい』

「怖かったでしょ?・・ごめんね、咲菜ちゃん。あいつ誰に対してもああなんだ。ったく・・」
「あ、あ、私は別に」
「一応あいつも俺たちと同級生なんだ、多分またいろいろ言われたりするかもしれないけどスルーでいいからね?」
「は、はい。」

気まずい沈黙の中をそそくさと歩いていく三輪田先輩の後ろ姿、誰も寄せ付けない、でもどこかで孤独を感じてる・・そんなオーラだった。