つまらない唇【短】

「あの、課長は、お酒飲まれないのですか…?」

焼きそばを少量、口の中に入れ飲み込んだあと、それを聞いてみた。

「んぁ?あぁ、酒は好きなんだがな。すぐに酔っちまってな」

へぇ、鬼でも苦手なものってあるんだ。

ちょっとだけ弱みを知れた祥子は、クスリと笑ってしまった。

ヤバッ!と思った時には既に遅く、俊樹を見れば片眉を上げこちらを見ていた。

「ごごご、ごめんなさいっ!!どうか、お許しをっ!!」

必死に頭を下げれば、「ぷっ」と吹き出すのが聞こえた。

「か、ちょう…?」
「はぁ。俺って、とことん怖がられてんのな。ま、仕方ねぇのか」

タバコを咥え、ライターで火を付けると、ゆっくり煙を吐き出した。

「あ、わりィ。タバコ吸って良かったか?イヤなら消すが」
「だっ、大丈夫です!」
「そうか、わりィな」

一旦、灰皿にタバコを押しつけようとしたが祥子の言葉に消すのを止めると、またそれを唇で挟んだ。