つまらない唇【短】

飲み物の他に、次々と運ばれてくる料理。

俊樹がオススメのを適当に頼んでもらうことにした。

「んじゃ、まぁ。お疲れさん」

ウーロンの入ったグラスを持ち上げると、それを祥子の目の前に持ってきた。

「お、お疲れ様ですっ」

慌てて祥子も頼んだカシスオレンジを近付け、“カチン”と合わせた。

「ほら、たくさん食え」

顎でしゃくられ、祥子は頷くと適当に盛り付け、それを俊樹の前に差し出した。

「なんだ、俺に取ってくれたのか」
「は、はい…。あの、ご迷惑でしたか…?」
「んなわけねぇだろ。ありがとな」

少し口角が上がった唇に、祥子の心臓はバクバクと音を立てた。

普段笑わない人が笑うと、こんなにもドキドキしてしまうものなのか。

祥子の手が若干震えていたが、それを隠すように素早く自分のを皿に取った。