「そうか」

そう短く発した俊樹は、店ののれんをくぐり中へと入って行った。

それに続けと、祥子も急いで俊樹の後を追った。

「二人だ。席は空いてるか」

上司は、店でも上司だった。

外では、どんな感じなのだろうと内心ドキドキしていたが、喋り方も笑わない顔もいつも通りだった。

金曜の夜だと言うのに、あまり店はガヤガヤしておらず落ち着ける空間だった。

通された部屋は二人専用というような狭さで、一つの部屋になっていた。

向かい合わせに腰を下ろし、「なに飲むんだ」とメニュー表を手渡された。

どうしよう…、と悩んでる向かいで俊樹は店員に「ウーロンで」と、もう決まっていたようだった。

「お前、酒は飲めんのか」
「弱いですけど、好きです…」
「ならば、飲めばいいだろう」

悩んでた祥子だったが、俊樹に勧められお酒を頼むことにした。