「ほら、行くぞ」
「あっ、はい!」

俊樹から差し入れにもらったお茶は、鞄にしまい机の上を軽く整理すると慌てて後を追った。

「俺の行きつけでいいか」
「はっ、はい。どこでも!!」
「ふーん。じゃ、ホテルな」
「うえっ!?いや、あの、課長…それは…えと、その……」
「バーカ。んなとこ、行くかよ」

俊樹の冗談は、冗談に聞こえない。

マジメな顔で「ホテル」なんて言われたら、どうしていいか分からなくなる。

祥子の心は、ホッとしたようなモヤモヤしたような、そんな心境だった。

「ここだ。お前、食えねぇもんは?」

店の前で立ち止まり、急に聞かれたことに驚きながらも「いえ、特には…」と、答えた。