つまらない唇【短】

「ふーん」

俊樹は祥子の唇を、ジッと見つめた。

「な、なんですか…」
「いや?これが、つまんねぇ唇かと思ってな」
「なっ…!いくら課長でも、そんなこと言うなんてヒドイですっ」
「わりィ、わりィ。冗談だ」

だから課長の冗談は、冗談に聞こえませんって!!

祥子は、そんなことを心の中で吐いた。

「お前の唇って、柔らかそうだよな」
「へっ?」
「メシ食っちまったからグロスが取れちまってるが、あの色はお前に合ってるしな」
「えと、あの、ありがとうございます…?」

急に真剣な目になるから、どう反応していいのか分からない。

どうせこれも冗談なんだろうと、思っていた。