夏音の風


冷たい手でぎゅっと掴まれた太腿に、柔らかい髪の毛が擽(くすぐ)る。


……男の子?


まとわりつくように夏音にくっついて離れないのは、小学生にも満たないであろう歳の着物姿の男の子だった。


「姫様、姫様。ご無事でなによりです」


この子、見た目は凄い可愛いけど……力が凄い。


「……ち、ちぎれる」


太腿の皮膚に手が食い込んでる。


「ひ、姫様!? 蒼(そう)様、大変です! 姫様が苦しんでおられます」


「バーカ。綏(かん)、おまえがそいつの肉を引っ張ってるんだよ」


「えっ!! も、申し訳ございません! 姫様、お許し下さい!!」


蒼という青年にそう言われると、綏と呼ばれた子供は慌てて夏音の太腿に巻いた手を外した。



……


…………




――に、”肉”ですって?


自分の非礼を詫びるように土下座してまで謝ろうとする子供を目の前にしても、夏音はその青年が言った『肉』という言葉が引っかかり、それが全くと言っていいほど視界に入っていなかった。