「翼なら、さっき帰ったよ」 その言葉を放ったのは、ボーカルの女の先輩。 秋本梓(アキモト アズサ)先輩だった。 私は、梓先輩に心の中を見透かされたようで、一瞬ひるんだ。 何を考えているのか分からないけど、先輩は私に笑顔を向けている。 「へぇ、そうなんですか」 私は、何でもないように振舞った。 そっか。 翼先輩、帰っちゃったんだ…。