ーーーーガシャン、ガシャン

またこの音かよ。
もう聞きなれたこの音は、屋上のフェンスを上る音。
そして、フェンスを上ろうとしている人物にも思い当たる節がある。


ーーーギギギ

「おい、お前。いい加減諦めろ。」

古びた屋上の扉を開けながら
いつもと同じように彼に声をかける。



「また、ですか。」

それはこちらのセリフだと言いたいところだが
あいつがフェンスから降りてきたため良しとしよう。

俺がフェンスに背中を預けながら座れば
彼も隣に座る。

だからといって、何をするわけでもない。
俺はいつものようにタバコを吸うし、
隣に座るこいつはボンヤリと考え事でもしている。


互いに名前すら名乗っていない。
学年も知らない。

何も知らない。


ただ、俺がいつものようにサボろうとした時に
こいつが自殺を図っていたから止めただけ。

俺は毎日ここに来るわけじゃない。
それに毎回彼がいるわけじゃない。
まぁ、いた時は毎回自殺しようとしてるんだけど。

にしても、彼は止めればすぐに止めるし
毎回、隣に座ってくるのに会話はしないし
いったい何なんだろう。


「あの、僕、死にたいんですけど。」


男にしては高い声だと思った。
よく通る声が、隣から聞こえた。


「知らねえよ。周りに迷惑がかからないように死ねよ。」


俺に何も関係ない奴が、俺の知らないところで死ぬ分には、何も問題はない。
だってそれは、毎日のように起こっていることだろう?

でも、それが俺の前で起こるとなれば話は別だ。

お前らだって目の前で人が死のうとしていれば引き留めるだろ?


「…それは難しいですね。考えておきます。」



は?今こいつ、なんつった?

考えておきます……?


「そんなこと考えるくらいだったら、ガリ勉らしく勉強しとけ。」


タバコを吸いながら俺の口から出たのは、そんな陳腐な言葉だった。
ひとまず今日は引き留められたみたいだ。


タバコの煙が、青空を漂う。



*:..。o○☆○o。..:*゜*:..。o○☆○o。..:*


死にたがり主人公、結構好きだったりします。
しかし、話にするとなると難しいですね。