家を飛び出したのは、高校二年の夏休みだった。

「東京に行って、なにするっていうのっ」

片田舎にしか住んだことのない母親は、泣きそうな顔で俺を叱った。

田んぼばかりがだだっ広く広がる外からは、蛙や蝉の声が頭を抱えたくなるほど五月蝿く鳴いている。

仕事終わりに父親は、毎日焼酎に顔を染めて、素行の悪い高校生活を送っている俺を、酔った顔で勝手にしろ。とでもいうように一瞥しただけだった。

その目が俺のことを見捨てているように見えて、だったら捨てられる前にこっちから捨ててやる。と捻くれた根性がむくむくと俺の心を支配していった。