チョコホリック【短編】


「今日のチョコレートはビターチョコだったんだよ」


「ビターチョコ?」


ゆっくり繰り返す。


「うん、食べたことなかった?」


「なかった」


だって、嫌いだからお菓子自体にうとくて、そんなチョコがあると初めて知った。


(あれ?)


何かが引っかかる。


(そういえば、チョコって誰が用意した?)


あたしは生クリーム、市橋くんは洋酒。


となれば、チョコは――。


ぽろりと涙が頬を伝った。

気づいてくれていた。

優しさで胸が熱くなる。



お菓子は甘い。


そんな先入観にとらわれてはいけないと教えてくれるのは、泣きボクロで悲しい表情に見えるとは限らないと教えてくれた先生。


そして、その教えを踏みにじるところだったのを止めてくれたのは、市橋くん。


もう意地はって嫌いだなんて言わない。

素直になって。


まずは、いつも笑顔の理由を市橋くんに訊いてみよう。


あたしのどこを好きになってくれたのかも訊かなきゃね。


もちろん、二人に負けないくらいとびっきりの笑顔を返すことも忘れずに。


【完】