「竜季!」


あたしは、野次馬の生徒たちをかき分けて男子寮へ戻ろうとする竜季の腕を掴んだ。


「なんで、あんな嘘を……」


「気にするなツムギ。お前が無事ならそれでいいんだから」


「そんな……! 竜季はあたしのために……!」


そう言いかけるあたしの口を、竜季の手が塞いで止めた。


「犯人はまだ誰だかわかってない。今はまだかくしておいた方がいい」


耳元でそっとそう言う竜季。


「竜季……」


「でも、この寮はやっぱり変だよな」


「え?」


「学校の校則はそんなに厳しくないのに、寮の決まりが厳しすぎる。締め出されるのも、男女交際の件まで首を突っ込むのも、なんだかおかしいだろ」