心臓が急激に早くなりじわりじわりと手のひらに汗がにじむ。


「気のせい、気のせいよ……」


自分にそう言い聞かせ、リンス前のキシキシする髪のままゆっくりと椅子から立ち上がる。


その瞬間、体中に感じる視線は更に強くあたしの体にまとわりついた。


早くここから出なきゃ……。


このドアの向こうにはいろはちゃんもいる。


一歩出れば大丈夫なはずだった。


それなのに……。


曇っていたハズの鏡が綺麗に晴れて行くのが目の端で見えた。


見ちゃダメだ。


見ちゃいけない。