そう聞くと、いろはちゃんは目を細めて遠い県の名前を口にした。


「そんなに遠くから?」


「そうなの」


「松林高校にどうしても来たかったの?」


「ううん。実は親にせき立たされて来たの」


そう言っていろはちゃんは笑った。


「ほら、あたしって少しぽーっとしてるでしょ? だから寮に入ってシャキッとしておいでって」


「そうなんだぁ」


確かにふわふわとした雰囲気をまとっているいろはちゃん。


なんだか一緒にいるとあたしまで安らいできそうだ。