…どうしても、名前で呼んでもらいたいらしい。

…渋っていると。


「・・・それじゃあ、オレはホテルに帰るから」

そう言って帰ろうとする。


あぁ!もうぅ!


「待って、瀬名!」

そう言って、部長、…瀬名の背広の裾を掴んだ。


「…もう一回」

「・・・ぇ?」


「もう一回ちゃんと言って」

「…瀬名、…傍にいて」

・・・結局、顔を見ては言えなかったけど、

瀬名は私をギュッと抱きしめた。



「傍にいる…次また帰ってくるまで、待っていられるように」

そう言って、瀬名は私にキスをした。


どんなに抱き合っても、足りないくらい、

ずっとずっと抱き合っていた。


…朝、瀬名は、私を起こさないように、そっとキスを落とすと、

部屋を出ていった。

泣く顔は見たくないから・・・と。