…次の日。私は1番乗りでオフィスに入った。


「…おはよう、ございま、す」

いつもこの時間には誰もいない。

早朝のオフィス。

それなのに、私より先に、出社していた社員がいた。



「…今、話しできるか?」

「…私にはありません」

そう言ってデスクに着こうとした。


「オレにはある、ついて来い」

「部長、離してください」

必至に抵抗するものの、部長は離すどころか、

より一層、握る手に力を込めた。



…資料室に押し込まれた私は、壁に押し付けられ、

どこにも逃げられなかった。

…ただ揺れる瞳で部長を見つめるしかなかった。



「勘違いするな」

「・・・何をです?」


「峰子さんと俺は、そんな関係じゃない」

「あれだけの事を、峰子さんは言い切ったんですよ?

勘違いも何もないでしょう?!」

これはもう、心の叫びと言ってもいいほど、大きな声でそう言った。