「准、ここにいたのかー!探したぞ!」
かいた汗を流した後、グラウンドに来てみたら駆け寄ってきた浜子。
俺の持っていたスポドリを見るなり伸びてきた手をはたくと、浜子を置いてみんなが集まるところへと向かった。
「よー准!ちょうど今からおまえの桐生が出番だぞ?」
にやにやと教えてくれた友達。
てか、桐生は俺のじゃないし。
グラウンドに目を向ければ、借り物競走にでている桐生がいた。
ピストルの音と共にスタートし、駆け出す。
そして、皆いっせいに落ちている紙を拾うときょろきょろと視線をさまよわせていた。
この学校の借り物競走は少し特殊で「借り物」というよりは「借り者」と言った方が正しいようなお題が出される。
運が悪いと「好きな人」だなんて恐ろしいお題が出されるのだ。
だから、たいてい生徒はこの借り物競走を嫌がってなかなか出場者が決まらない種目のひとつだ。
………きっと、知らずにクラスのやつらに決められたんだろうな。
憐れむような気持ちで桐生を見やる。
すると、目があった桐生はこっちに向かってきていた。
「桐生こっち来てるぞ!」
「好きな人とか引いたんじゃねーのかー?」
にやにやと俺の背中を押してくるのを全力で止めさせる。
なんやかんやしてるうちに桐生はすぐそこまで来ていた。
「お、おう桐生…どーした?」
「ちょっと来てくれる?」
そう言ってぐっとひっぱられる………浜子。
桐生に引っ張られながら、隠しきれてない笑顔でちらちらとこっちを見てくる浜子を軽く殴りたくなったのは、自然だと思う。
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