「おつかれさま」
かいた汗を流そうと水道場に向かう。
するとそこにいたのは桐生で、きれいに折りたたまれたタオルを差し出してきた。
おずおずとタオルを受け取り、ありがたく使わせてもらう。
髪をがしがしと拭いていると、桐生が口を開いた。
「……かっこよかった」
「っ!?」
いきなりの言葉に動揺して手を止めてしまう。
慌てて桐生の顔をみると、やっぱりいたっていつも通りの顔だった。
「って、みんな言ってたよ」
「あ、あぁ、そういうこと」
一瞬でも期待した俺が馬鹿だったか。
「相手、バスケやってる人なんでしょ?」
「うん」
「なら、善戦だったと思うけど」
そこまで言われて、なんで今桐生がそこにいるのか分かった気がした。
こいつ、負けたこと励ましに来てくれたんじゃ。
後半、俺らは前半以上に点を稼いだ。
そのおかげで後半の試合だけ見れば俺らのが勝ってるといえるんだけれども…。
前半の点差が埋めきれず、結果負けてしまったのだ。
漫画とかだったらここで逆転して告白して付き合う、みたいな流れになるんだろうけど。
所詮は現実。そう甘くいかないわけで。
敗退した俺らは解散して今に至るってわけだ。
「じゃあ、これここ置いとくから」
そう言い残して去って行った桐生。
ここ、といった場所には未開封のスポーツドリンクが置いてある。
……これだから抑えがきかなくなりそうになるんだ。
ぐいっとスポーツドリンクに口をつける。
含んだそれはひんやりと冷たくて、俺はそれを飲み込んだ。
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