コンコンッ 「どうぞ」 中から聞こえた、あの人の声。 「失礼します。君太です」 あの人の前では、敬語でなければいけない。 それは身内であっても同じ。 だから父さんは俺たちにも敬語を使うのか? あの人の前で、ボロが出ないよう。 「待っていたわ。遅かったわね」 「申し訳ありません。すぐそこで、お父様に会ったものですから。 少々立ち話を」 「そう。なら仕方ないわね。あの人は忙しいから」 「あの。僕に何の用ですか?」