私はドキドキしてしまって。

 
そばにあったグラスに口をつけて、ぐいっと飲み干した。



「あ、やば…」


 
そ、そうだった。

 
カクテルだった。

 
お酒解禁ってことで、嬉しくてなみなみと注いでいたんだった。

 
つい、いつものジュース感覚で…



「ぷへ~~」


 
じん、と熱くなる咽と胃の感じ。

 
鼻にまとわりつくアルコールのにおい。

 
慣れてないと、「酔った」という感覚もイマイチよく分からない。

 
 
けど。

 
美味しいなぁ…お酒。



「飲みすぎんなよ」


「大丈夫だし」


 
もう一杯グラスに注いで、また飲み干すと、ふわんふわんとイイ感じ。

 
あ~…これが大人の味ね。

 
ふふふ…ん、私ももう、大人なのだよ。



「そのくらいにしとけよ」


「はいはいはい、わかってますよ、流川直人」


 
私はグラスを置いて、チキンにかぶりついた。



2時間くらいが過ぎるころ、ふたりでぼんやりテレビを見ていたとき。



「そうだ」


 
立ち上がった流川は、ベッドルームへ行ってから、四角いなにかを持って戻ってきた。



「ほら、やるよ」


 
テーブルの上にのせられた小さな包み。



「え?」


「一応な。誕生日と聞かされてなにもやらないっていうのも、男がすたるだろ。誤解すんなよ」


 
そんなことを言って、でも少し照れてるような顔つきの流川は、ごまかすようにビールの缶を持ち上げて、ぐいっとあおっている。