何回目だったろう。



「もしもし?」


 
流川の、低い声が聞こえて。



「も、もしもし…、流川?」


 
その声にむかって私は呼び掛けた。



「ん? なんだお前か。なんだ、もう会いたくなったのか?」



からかうように、軽く笑う声がして。

 
でも私には、それに反発する余裕なんて全然なくって。



「る、流川…今…どこにいるの?」


「はあ? なんだよ?」


「わ…私…」


 
声が震えて、涙声になってしまう。



「…なんだよ、どうした?」


 
私の様子に気付いたのか、流川の声が曇った。



「だ、誰かにつけられてて…どうしよう…」


 
電話の向こうの流川が、一瞬、戸惑うのがわかった。



「つけられてるってお前、今どこ歩いてんだ、こんな時間に」


「コンビニに行って…その帰りで…アパートに戻る途中なんだけど…」


「バカかお前は」
 
 
 
流川はそう言って、でもすぐに、



「公園まで歩いたか」


「え?」


「公園だよ、その道沿いにあったろ。そこまで行ったか」


「ううん、まだ」


「公園の先に、大通りに出れるわき道があったよな?」


「う、うん」


「そこに入れ。入ったらすぐに走ってコンビニまで戻れ」


「え…? でも…」