しゃがんだまま、神経を後ろに凝らす。

 
しん…と静まる道に、ずっと遠くの方から車の走る音がする。

 
靴音は動かない。


 
私はゆっくり立ち上がった。

 
濡れたボトルを胸に抱えて、肩をすぼめる。


 
だ…誰…?


 
振り向くことができず、しばらく立ち尽くした。


 
あ…

 
もしかしたら…



「流川…?」


 
そうだ。

 
きっとそうだ…!

 
また突然私に声をかけて、驚かすつもりで…


 
無理にでもそう思い込もうとして。

 
私は打ち続けている心臓を落ち着かせようと深呼吸した。


 
そして。

 
思い切って振り返る。



「…あれ?」


 
後ろには誰も居なかった。

 
ただ、暗い道が続いてるだけで。



「なんだ…気のせいか」


 
ほっと胸をなで下ろす。

 
最近、嫌な事件ばかり続いてるから、きっと私の神経が過敏になりすぎているだけだ。


 
気を取り直してまた歩き出す。


 
50メートルくらい進んだところで、ふっと気づいた。

 
何となく、靴音がずれている。

 
ワンテンポ遅れて、後ろから水音がついてきている。

 
 
気のせいだと思いたかった。

 
けれど。

 
歩調を早めると、よく分かる。

 
 
やっぱり、つけられてる…