要くんを送り出してから。

 カエルに「いってきます」を言って、部屋を出た。


 バイト先に着いて、

 麻紀に流川が自分のアパートに戻った話をすると、

「え? もう一ヶ月経つんだ。なんか…早いね」

 飲み友達ができたような感覚でいた麻紀は、

「でも、連絡とか取れるんでしょ?」

 言っていたけど。


「ううん。実は…」


 旅行から帰ってきてからのことを麻紀に報告すると、

「…そうなんだ」

 麻紀に似合わない渋い顔をしていて。


「唯衣は? それでいいの?」

 心配してくれて。

「うん」

 私の返事に、

「唯衣がそれでいいなら…」

 まだ腑に落ちない感じで。


 だけど。

 麻紀もそれ以上のことは詮索しなかった。


 
 私も。

 要くんが帰ってきてくれたことで、嬉しかったし。

 もう、流川のことは考えないようにしようと思っていた。

 番号も消してしまったことだし。


 
 バイトを終えて。

「唯衣、今日、ご飯食べてく?」

 麻紀に聞かれたけど。


「今日は要くんと一緒に食べる」

 返事して。


 いつもの駅で麻紀と別れた。


 今日はバイト代も入ったし。

「良かったぁ。これでガス代も払える」

 自分のアパートに戻ることも可能になった私は。

「今日は、なにか美味しいもの作ろうっと」


 要くんのために。

 
 要くんのアパート周辺には大きいお店があまりないから、

 ひとつ手前の駅で降りて、夕食の材料をそろえることにした。